人は記憶だけを
よすがに生きていける。
やさしいことば、
いとしいことば
聴覚が 覚えている
せなかのぬくもり。
手触り、感触
皮膚の記憶
みんな私の脳の奥のおくのほうに詰め込まれたまま
火葬されて 煙になって
墓標には 何も残らず
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湖にかかる大きな橋を
自転車でのぼってくる
若者がいた
その少し後に
やはり自転車の、老人がいた
45年?50年?55年前?のその老人の方の姿 を
想像してみた。
その若者の年寄りになった姿 も
想像してみた。