2016-08-20

★わざと、各駅停車に乗って帰る、懐かしくて。ひとつひとつの駅がアナウンスされるたびに、かかわる思い出がよみがえる。変わったところも、変わらないところも、あいまいな記憶がカバーする。私の頭の中の映像は誰にものぞき見ることはできないし、誰に影響されるものでもない。

★川を渡ると空気がかわる。電車は、その空間を少しずつまぜこぜにする。私が川を三つ渡るとき、私は私で変わらなくても、ほかの誰かも誰かとして変わらなくても、乗ったり降りたりの人たちの構成が、その車両の色合いを変えてゆく。それでも車窓からの家のかたち、緑の具合、空の大きさなどが私が今どこにいるのかをちゃんと示してくれている。

★見慣れた電車が到着し、乗り換える。そこで記憶の旅のドアも閉まる。今という現実が、過去とつながっているなんてもう思えない。