カブトムシの幼虫

暑い夏に黒光りして格好いい姿を見せるカブトムシの成虫。

真冬1月のこの時期、カブトムシはいったいどんな様子をしていると思いますか。

理科室で何匹か飼っていたものを、4年生のみんなに見せました。

土の中にいるので、そっと掘りあげて、観察。

思っていた以上に大きい!という声があがりました。

 

いったいどのくらいなのか、はかりにのせて体重測定をしました(下の写真参照)。

ぜんぶで7匹いて、いろいろな重さでしたが、大きく20g台と30g台に分けられました。

では、なぜ大きめの幼虫と、小さめの幼虫がいるのでしょう。

 

何人かの子が手をあげて答えてくれました。

「生まれた時期が違う」

「栄養がちがったのかも」

「親の大きさが違うんだよ」

 

なるほど、生き物の育ち方を想像すると、考えられる意見だと思います。

答えは・・・この先どう育っていくかを見れば、わかるかもしれません。

理科室では、大きめグループと小さめグループを別々の容器に入れて、育ててみることにします。

 

じつは、どうして幼虫の大きさが違うのか、みんなに意見をきくには少し私の説明が足りませんでした。

これまで幼虫をどんなふうに育ててきたか、その経緯をお話しします。

まず、去年の夏、成虫のカブトムシのオスとメスを2~3匹ずつ、一緒に飼育していました。たしかに、体の大きいオスもいましたが、角が短いなど、小さめのみかけのオスもいました。メスも、立派な体格のものも、小ぶりなものもいました。

そして、どのオスとメスが交尾したかはわかりませんが、あるとき白い小さな卵を見つけました。そのままにしておくと、卵の数はふえていきました。

生まれた時期が違いますね。

夏の終わり、成虫はどんどん死んでいってしまいました。9月に入り、卵はどうなっているのか土の中を確認することにしました。

すると、まだ卵から出たばかりのような、豆つぶのような幼虫がいる一方、その2~3倍はある、大きな幼虫もいました。これらは、早く卵からかえったものと、遅かったものだな、と思いました。

その後、だんだんと幼虫は成長し脱皮してたくさん食べるので、ホームセンターで腐葉土を購入、大きな容器にたくさん敷きつめました。

7匹はその中で過ごしていたので、実は栄養という点では、みな等しい環境で同じものを食べていました。

だとしても、幼虫にも個体差があって、大食いもいれば、小食のものもいるかもしれませんね。

10月、再度様子を確認しました。すると、すべての幼虫が、ぱっと見では同じような大きさになっていました。

あとから生まれたものも、成長をスピードアップさせて、同じくらいの大きさに追いついたように見えました。

 そして季節は進み、どんどん寒くなって、幼虫たちは容器の底のほうでじっとしているようになりました。

そんな中、そっと掘り起こしてみなさんが観察した、というわけです。

 

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ここから先は、「カブトムシの音がきこえる(土の中の11か月)」(文:小島渉)という本から、ヒントを探ってみようと思います。

本によれば、夏の終わりにふ化したときには40ミリグラムしかなかった幼虫の体重は、10月には2度目の脱皮を終えて3齢になると、オスは30g、メスでも20gになる、とあります。

そして12月~2月の間、幼虫は十分に成長した3齢の状態で、体長は8センチ~大きいもので10センチほどになっていて、40gをこえるものもあるとも書かれています。さらに「カブトムシの一生のうちで、いまが一番体重が重たいとき」「これ以上体が大きくなることもありません」とありました。

なお、この本を書いた小島渉さんは大学でカブトムシを研究している先生なのだそうですが、2020年8月には「子供の科学」という雑誌で<北にすむカブトムシほど成長がはやい>とする小島さんの新しい研究結果が掲載されています。

日本の北から南まで、多くの地域で採取したカブトムシを同じ条件下で飼育したところ、北に棲息するカブトムシほど、より多くのエサを食べ、効率よく体重を増やしている、ということがわかったのだそうです。

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これらを読んで考えると、カブトムシの幼虫が体重を増やすしくみには、生まれた地域も関係するようですが、いずれにしても一番体重が重たい12~2月で、オスとメスに重さの違いがある、と参考にすることができます。

 

とはいえ、実際にこの先も飼育していくことで、蛹になり、夏に羽化したらどんな姿で出てくるのか、楽しみに待ちたいと思います。

 

 

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軽いグループ

 

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重いグループ