あるお花と、みつばちと、その他

むかしむかしあるところに、いちりんのきれいなお花がありました。

お花は、大地にしっかりと根をはり、うつくしいお空をながめてくらしていました。

ときどき、みつばちがやってきました。

お花は自分のおいしいみつを少しわけてあげました。

そのかわりに、みつばちはあちこちの ちがうお花のいちぶぶんをもってきて

とおいくに のいろいろなお話をしてくれました。

お花は、そのお話を、とても楽しく聞いていました。

ところがあるとき、お花は

みつばちからいろいろなお話を聞いているうち

自分も その とおいくに へいってみたいと

思うようになりました。

お花はみつばちにたのみました。

みつばちはいいました。

だめだよ。ぼくにはそんな力はない。

ぼくは、いろいろなお花のいちぶぶんをもってあるいて

お話をきかせてあげることしかできないよ。

お花はがっかりしました。

それでも、あいかわらず大地にしっかりと根をはり、

ますますきれいに咲いていました。

そんなあるひ。

ひとりの女の子がお花のちかくまでやってきました。

女の子はいいました。

まあ、なんてきれいなお花なの。

わたし、つんでいこうかな。

お花ははっとしました。

わたしはもしかしたら、あれほどいってみたかった

とおいくに にいけるかもしれない。

ぽきん。

お花はおりとられ、女の子の手もとをうつくしくてらしました。

女の子も、とてもうれしそうでした。

さて、そのご

そのお花がどうなったのかは、だれもしりません。

もしかしたら

女の子のおうちの花びんに

きれいに生けられているかもしれません。

あるいはリボンをかけられ いいかおりのする

ドライフラワーになっているかもしれません。

それとも

ふとしたひょうしに風にとばされ

野のまんなかにひっそりとたたずんで

もっとひろい お空をながめているかもしれません。

いったいそのお花がとてもいってみたかった

「とおいくに」は

どこにあったのでしょうか。

お花は、そこまで

たどりつくことができたのでしょうか。


なにも だれも わからないけれど

お花が思っていた その きもち は

いつまでも かわらずに 

せかいのどこかで きらりとかがやいている。


わたしにはそのようにおもえて ならないのです。


お・わ・り。