- 作者: 池澤夏樹
- 出版社/メーカー: 中央公論新社
- 発売日: 2011/01/22
- メディア: 文庫
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初出「読売新聞」朝刊 2005.7~2006.8。
いろいろ感想を書きたいですが、
ひとまず印象に残ったところを引用。
「本当を言えば、何かを維持したいという希望は間違いだ。
わかっているんだけどね。
安定した収入の基盤というきみの願いも同じでしょう。
この先ずっとこうあってほしいというのは、生きることに対する原理的矛盾だよ」
「だって、生きるということは次々に新しいことが押し寄せてきて、それとぶつかって、
乗り切って、それで次へ進むことだからさ。維持や安定を望むというのは、押し寄せるものを
制限してくださいということだから」p370
「欲しいというものがあった時、それが本当に欲しいのかどうか、よく考えるんだ。
何かが欲しいという気持ちは言わば亡霊だよ。
ぼくたちの前にはいろいろな亡霊が登場する。その一人ずつとじっくり話し合うと、たいていの亡霊は退場する。
そして、本物だけがこちらの腕の中に飛び込んでくる。本当に必要という点を見極める力が強くなると、
欲しいものを引き寄せる力に変わる。人の精神には
そういう機能がそなわっているんだ」p386
「運命というのは与えられたものをそのまま受け取ることではないと思う。
一歩ごとを確信を持って踏み出して、その結果を引き受けることだと思う。
だからぼくは美緒について後悔しない。ここで会社を辞めることも後悔しないだろうし、
たとえ失敗に終わるにしてもきみを説得しようとしている」p581
「過去の解釈は一つの物語にすぎない。だからそれにしがみつかない方がいい。
結局のところ、人は物語が好きなんだ」p586
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